ELCASの全日程が終了しました!

高校生たちに実際の研究活動さながらの学習体験をしてもらうELCASですが,ついに先週末,4日間にわたる全ての企画が終わりました!

参加してくれた高校生のみなさん,本当にお疲れさまでした!

ちなみに,今回の講座ではどのようなことを学習したのか?気になる方のために改めてご紹介します。

まず1日目はパルプ繊維を分散させた懸濁液を網で抄いて紙を製作する「抄紙」を行いました。

抄紙は紙産業の最も重要な工程であり,似たような操作として楮 (こうぞ) の繊維から和紙を漉いたり牛乳パックからハガキを作ったりした経験がある生徒もいたかもしれませんが,まさか抄紙装置が研究対象として大学の地下に置いてあるとは,と驚いたのではないでしょうか。 以降の日程では,この紙を構成するパルプ繊維と,同じ繊維にひと手間加えて作られるセルロースナノファイバーの違いについて考察していきます。

2日目は製作した紙の様々な物理量を測定するとともに,パルプにTEMPO酸化と呼ばれる処理を施すことでセルロースナノファイバーを得る操作を行いました。

セルロースのTEMPO酸化 (https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201905np/index.html) とは数十 µm単位の繊維径のパルプを数 nm程度まで簡単に解繊できるようになる画期的な技術です。 実際の実験はTEMPO酸化を効率的に行うために自動滴定装置を利用し,待ち時間に髙野先生によるセルロースナノファイバーの講義を行いました。

3日目は地下の分析室にて,1 日目に作った紙と 3 日目に作ったセルロースナノファイバーを 2 つの方法で解析しました。

まず電子顕微鏡でパルプ繊維とセルロースナノファイバーの形態を直接観察し,それぞれの特徴を検討しました。

個人的に,髪の毛の数千分の 1 のスケールという極微小の世界を自由に行き来できる電子顕微鏡は非常に夢のある機械だと思います。

高校生のみなさんも楽しそうに触ってくれて非常に嬉しかったです。

次にFT-IRによってTEMPO酸化前後の化合物を見比べました。

実際の研究現場では結果は文章でなくデータで現れる,という講義中の言葉通り,化学反応を裏付ける情報をグラフから読み取るという作業に挑戦しました。

次回に備え,この日の終わりに 1 日目に製作した通常の紙とセルロースナノファイバーをほんの少し添加した紙の 2 種類に同じ酵素を染み込ませておきました。

最終日は 3 日目の終わりに用意した紙試料に色素の前駆体を滴下し,2 週間前に加えた酵素の変化を色によって間接的に評価する手法を学びました。

これにより,セルロースナノファイバーの有無で,染み込ませた酵素にどのような差異が生まれたかを確認し,セルロースナノファイバーの特殊な機能について考察することで実験を締めくくりました。

最後に,本プログラムの集大成として,これまでの研究成果をポスターにまとめる課題にみんなで取り組みました。

まとめ役のリーダー 2 人を筆頭に,6 人で役割分担しながらこれまでの実験を振り返りました。

生徒たちがみんな発表慣れしている様子で,予定よりずっとスムーズに進んで驚きました。 来年の発表はどのような感じになっているのか期待しつつ,これで今回のELCASは終わりとなりました。

改めて,高校生のみなさん,ありがとうございました!

またぜひ大学でお会いしましょう!

(石井)