研究概要

研究概要

当研究室は,これまで,木質材料の化学成分の全般にわたって,基礎から応用まで幅広い研究を展開しています。

セルロース

  • セルロースのキラリティーに関する研究
  • 新規な機能性セルロース誘導体の合成とその性質評価
  • 既存セルロース誘導体の機能化とその性質評価 etc.
鬱蒼とした森に沈む夕日。

リグニン

  • リグニンの化学構造の解明に関する研究
  • リグニンの化学反応に関する研究
  • リグニンの機能化に関する研究 etc.

セルロースナノファイバー(CNF)

  • CNFの基礎的物性の解明
  • CNFの応用に関する研究 etc.

ヘミセルロース

  • ヘミセルロースの機能化に関する研究(最近,研究を始めました)

キチン・キトサン

  • キトサンの化学反応に関する研究
  • 新規な機能性キトサン誘導体の合成とその性質評価  etc.

抽出成分

  • タンニン様ポリマーに関する研究
  • アビエチン酸に関する研究  etc.

木材(リグノセルロース)

  • ウッドプラスチック(WPC)に関する基礎研究
  • 木材の化学修飾に関する研究  etc.(紙・パルプも守備範囲です)

最近の研究成果

セルロースのキラリティーの謎に挑戦する。
CNFでマイクロ流体ペーパー分析デバイスを作る。
キノコのリグニン分解反応を模倣する。
キトサンの化学反応を開発・利用する。
ウッドプラスチック(WPC)を分析する。
セルロース系液晶フィルムを作る。
セルロース系液晶マイクロ粒子を作る。
リグニン構造解析用データを収集する。
リグニンの形成反応を探る。
機能性セルロース薄膜を作る。Part 1
機能性セルロース薄膜を作る。Part 2
ChNCで細胞培養用コーティング剤を作る。
リグニンをタンニンに変換する。

   

 

 

 

セルロースのキラリティーの謎に挑戦する。

単糖には, 鏡像異性体の関係にあるD体とL体が存在します。しかしながら, 天然に存在する単糖は, ほとんどがD体です。この現象を天然のホモキラリティーとよびます。
植物の主要成分であるセルロースも,天然セルロースはD体しか存在していません。

当研究室では, 2020年にL-セルロースの化学合成に世界で初めて成功しました。

現在,この謎(なぜ天然ではD体しか存在しないのか?)の解明に挑戦すべく,L-セルロース(誘導体)の合成と性質について研究しています。

論文:Yagura et al. “Synthesis of an enantiomer of cellulose via cationic ring-opening polymerization”, Cellulose 27 9755-9766 (2020).他 


   

CNFでマイクロ流体ペーパー分析デバイスを作る。

当研究室では,セルロースナノファーバー(CNF)が酵素活性を低下を防ぐことを見出し,この性質を利用したマイクロ流体ペーパー分析デバイス(μPAD)を提案しています。

論文:Murase et al., Cellulose Nanofibers as a Module for Paper-Based Microfluidic Analytical Devices: Labile Substance Storage, Processability, and Reaction Field Provision and Control, ACS Applied Bio Materials 1, 480-486 (2018).


    

キノコのリグニン分解反応を模倣する。

化学パルプ化は,高温高圧の厳しい反応条件を必要としますが,リグニンは,自然界では,キノコにより常温常圧の温和な条件で分解されています。この反応は,Mediator(仲介物質)を用いる酵素間接分解反応です。

当研究室では,この酵素分解反応を模倣したバイオミメティック反応による電解反応を研究しており,環境に優しいリグニン分解反応を開発中です。

論文:Shiraishi et al. “Comparison of a series of laccase mediators in electro-oxidation reactions of non-phenolic model compounds ”, Electrochimica Acta 106, 440-446 (2013) 他.  


   

キトサンの化学反応を開発・利用する。

キトサンは,エビ・カニの甲殻類の甲羅の主成分であるキチンの脱アセチル化物で,セルロースと類似した化合物です。当研究室では,キトサン誘導体の簡便な合成法を開発し,その合成法を用いて,各種キトサン機能性薄膜の調製も研究しています。

論文:Shibano et al. “Facile synthesis of acyl chitosan isothiocyanates and their application to porphyrin-chitosan derivative”, Carbohydrate Polymers 113, 279-285 (2014). 他 


   

ウッドプラスチック(WPC)を分析する。

ウッドプラスチック(WPC)(木材とプラスチックの複合材料)は,耐久性に優れた木質材料として,エクステリア材料などして活躍しています。

当研究室では,WPCの性能向上に寄与すべく,WPCのミクロ構造の解析などを行っています。

論文:Niwa et al. “Wetting and localization of compatibilizers in biocomposites: A nanoscale evaluation and effects on physical properties”, Polymer 185, 121963 (2019).他

  

セルロース系液晶フィルムを作る。

当研究室では,市販エチルセルロース(EC)とポリアクリル酸を複合化した液晶フィルムを調製し,そのフィルムがメカノクロミック性(力学的刺激に応答して色が変化する性質)を示すことを明らかにしました。

(色だけでなく反射円変更の掌性も系統的に変化します)

論文:Miyagi et al. “Dual mechanochroism of cellulosic cholesteric liquid-crystalline films: wide-ranging color control and circular dichroism inversion by mechanical stimulus”, Journal of Materials Chemistry C 16, 1370-1376 (2018). 他


   

セルロース系液晶マイクロ粒子を作る。

当研究室では,市販ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)に下記のようなブロック共重合体をグラフト重合させた誘導体を合成し,HPCの液晶構造を内部に保持した液晶マイクロ粒子の調製に成功しました。

論文:Chakrabarty et al. “Topological Transition in Spontaneously Formed Cellulosic Liquid-Crystalline Microspheres in a w/o Emulsion”, Biomacromolecules 19, 4650-4657 (2018). 


  

リグニン構造解析用データを収集する。

リグニンの化学構造は,ほぼ類推できてるものの,非常に複雑な化学構造のため,実験的証明が未了です。そのため,リグニンの化学構造の解明は,今でも重要な課題です。

当研究室では,リグニンの化学構造(とくに,リグニンとセルロース・ヘミセルロース間の結合(LC結合))について,部分構造を有するリグニンモデル化合物を多数合成し,LC結合解明に向けた解析用データを収集しています。

論文:Miyagawa et al. “Synthesis and fundamental HSQC NMR data of monolignol beta-glycosides, dihydromonolignol beta-glycosides and p-hydroxybenzaldehyde derivative β-glycosides for the analysis of phenyl glycoside type lignin-carbohydrate complexes (LCCs)”, Holzforschung 68, 747-760 (2014)  他.


  

リグニンの形成反応を探る。

モノリグノールを試験管内で重合させれば,人工リグニン(DHP)を作ることができます。この重合反応は,天然リグニンの形成のモデル反応であり,この反応を詳細な解明は,リグニンの化学構造決定の一つの手段です。

当研究室では,コニフェリンを用いた重合反応を解析した結果,天然リグニンにモノリグノール配糖体が取り込まれる新たな可能性を示しました。

論文:Miyagawa et al. “Possible mechanism for the generation of phenyl glycoside-type lignin-carbohydrate linkages in lignification with monolignol glucosides”, Planta 104, 156-170 (2020). 


  

機能性セルロース薄膜を作る。 Part 1

セルロースは,整然とした直鎖状高分子であり,機能性官能基の導入・薄膜化により,機能性セルロース薄膜を調製することができます。

当研究室では,2020年に,上記のセルロース誘導体を利用した有機ELデバイスを作成し,緑色発光させることに成功しました。 

論文:Shibano et al. “Thermally activated delayed fluorescence benzyl cellulose derivatives for nondoped organic light-emitting diodes”, Macromolecules 53, 2864-2873 (2020). 他 


  

機能性セルロース薄膜を作る。Part 2

当研究室では,種々の光増感色素担持型セルロース誘導体の機能性薄膜を調製し,その薄膜に光電変換機能があることを確認しました。

論文:Saito et al. “Preparation of phthalocyanine-bound myristoroyl celluloses for photocurrent generation system”, Cellulose 24, 3659-3669 (2017) 他. 


 

ChNCで細胞培養用コーティング剤を作る

キチンナノクリスタル(ChNC)の細胞親和性が,ChNCの脱アセチル化度に依存することを見出し,これを利用したインクジェット印刷対応型の細胞培養用材料を提案しています。

Suzuki et al. “Simple Inkjet Process To Fabricate Microstructures of Chitinous Nanocrystals for Cell Patterning” Biomacromolecules 16, 1993-1999 (2017).


 

リグニンをタンニンに変換する。

お茶や柿の成分として有名なタンニンは,生体防御のための機能(タンパク質沈殿能,抗酸化能,金属吸着能など)を有していることが知られています。

た

リグニンを脱メチル化によりタンニンの類似の化学構造に変換することにより,タンニンの機能を発現させることに成功しました。

論文:Sawamura et al. “Lignin functionalization through chemical demethylation: preparation and tannin-like properties of demethylated guaiacyl-type synthetic lignins ”, ACS Sustain. Chem. Eng., 5, 5424-5461 (2017) 他.